【週刊ホテルレストラン】 プロ野球チームがやってきた! そのとき利益は出せるでしょうか

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プロ野球チームがやってきた! 1

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客室稼働率はほぼ100%の1週間

突然の電話だった。電話の向こうの男性は、テレビや新聞で聞き慣れたプロ野球チームの名を告げ、40人ほどの選手やスタッフの1週間の滞在は可能かと尋ねてきた。聞けば、今年から就任した新監督の発案で、いつものキャンプ前に1週間のプレキャンプを行なうことが突然決まり、宿泊先を探しているという。
ホテルAは、平日は主にビジネス客、休日は観光目的の家族客が中心となる100室規模の四国の中堅ホテルだ。経営は決して楽ではなく、設備も運営体制もお世辞にも先進的とは言えないが、堅実な経営を続け、地元ではそれなりの評価も得てきた。しかし、プロ野球のチームを受け入れるなどという経験はこれまでになく、支配人は少々興奮気味だった。
「皆さん、プロ野球チームを受け入れることとなりました。これまでにいただいていた予約と合わせて、この1週間の客室稼働率はほぼ100%となる見込みです。また、選手やスタッフの皆さんの朝・夕の食事は、すべて当ホテルのレストランで賄ってほしいとのご要望です。大変な1週間となりますが、全従業員の力を結集して、ぜひ、『来年もあのホテルにしよう』と言っていただけるようなサービスを提供しましょう」
管理者を集めた緊急会議で支配人は言った。
「この1週間は、アルバイトを含むすべての従業員が毎日勤務する予定としてください」ホテルは、文字通り全従業員の力を結集して対応することとなった。

経営利益は10%減

期待と不安の中でチームを受け入れたホテルは、結局、嵐のような1週間を何とか乗り切ることができた。有名選手たちへの接客、ホテル周辺に集まるファンや報道陣に対する対応など、慣れないことも多く、やたらと走り回ったり、必要以上に待機時間が出たりといった問題もあったが、大きな事故などもなく、関係者一同ほっと胸をなでおろした。
それから数週間が過ぎ、いよいよオープン戦が始まるという時期になって、経理部がまとめた先月の月次決算が報告された。通常であれば50%ほどの稼働率となる平日を含めて、まるまる1週間の100%稼動を実現したこの月の月次決算には、支配人はそれなりに期待していた。
しかし、報告された内容によれば、売り上げは前年同月比で8%増となっていたが、経常利益は10%減となっていた。驚いた支配人はすぐに調査を行なうよう経理部に命じ、その後、売上高人件費率が前年同月32%であったのに対して、この月は39%になっていたことが分かった。人件費が前年同月よりも3割ほども増えており、利益を圧迫していたのだった。
「一体どういうことなんだ」
支配人は頭を抱えてしまった。

人件費と利益の管理にどのようにコンピューターを活用することができるか

あなたのホテルに、突然プロ野球チームが押しかけてくるなんていうことは、めったにあることではありません。これはフィクションです。でも、突然の団体客を受け入れることや、気が付くと利益率が下がっているなんていうことは、経験のある方も多いのではないでしょうか。
今日は、ホテルの運営、特に人件費と利益の管理にどのようにコンピューターを活用することができるかというお話をさせていただきたいと思います。同じ出来事が別のホテルに起こったとしたら、次はそんなお話を紹介させていただきます。

必要最低限の自動化と係数分析

突然の電話だった。電話の向こうの男性は、テレビや新聞で聞き慣れたプロ野球チームの名を告げ、40人ほどの選手やスタッフの1週間の滞在は可能かと尋ねてきた。聞けば、今年から就任した新監督の発案で、いつものキャンプ前に1週間のプレキャンプを行なうことが突然決まり、宿泊先を探しているという。
ホテルBは、平日は主にビジネス客、休日は観光目的の家族客が中心となる100室規模の四国の中堅ホテルだ。経営は決して楽ではないが、努力と工夫をモットーに、低コストで実現できる改善に日々取り組んできた。日々まじめに掃除するというだけではなく、どうしたらもっと汚れにくくなるかを考える。そんな小さな改善の繰り返しだった。
コンピューターの活用も、ホテルBの特色の一つだった。別に高価なホテル管理システムを導入しているわけではない。安価な業務パッケージと市販のソフトを組み合わせて、手間をかけず、必要最低限の自動化と係数分析を行なってきた。

必要な人員配置を検討し特別シフトを作成

支配人は、管理者を集めた緊急会議で言った。
「皆さん、プロ野球チームを受け入れることとなりました。これまでにいただいたいた予約と合わせて、この1週間の客室稼働率はほぼ100%となる見込みです。また、選手やスタッフの皆さんの朝・夕の食事は、すべて当ホテルのレストランで賄ってほしいとのご要望です。大変な1週間となりますが、全従業員の力を結集して、ぜひ、『来年もあのホテルにしよう』と言っていただけるようなサービスを提供しましょう」
支配人は、フロントやレストランなどの各管理者に、必要な人員配置を検討し、特別シフトを作成するよう指示した。
いよいよチームが到着し、緊張の1週間が始まった。有名選手たちへの接客、ホテル周辺に集まるファンや報道陣に対する対応など、慣れないことも多く、やたらと走り回ったり、必要以上に待機時間が出たりといった問題もあったが、大きな事故などもなく、何とか無事に初日を終えることができた。

レストランの売上高人件費率が原因

2日目も、いつもより少しざわついたような緊張感の中で始まった。朝食が終わり、チームが練習のためにホテルを出て行くところを見送ると、支配人はやっと一息ついて、日課にしているデータの確認を行なった。
すると、昨日の売上高人件費率が45%になっていることを発見した。稼働率が低く、どうしても人件費の比率が高くなる平日でも約33%、ほぼ満室近くになる週末では30%ほどとなる値が、大きく跳ね上がってしまっている。どうしたことだろう。不思議に思った支配人は、部門別の詳細データを確認してみた。そして、レストランの売上高人件費率が原因であることを確認した。

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<参考:管理システム機能「生産性管理」>

「売上高に対して人件費が多過ぎる。つまり人員の過剰配置だ。どうなっているんだ」
レストランの管理者を呼ぶと、支配人はグラフ化した資料を見せながら尋ねた。驚いた管理者はグラフを見つめながら言った。
「どうしてなんでしょう。過去の例に基づいて適切な配置をしたはずです。キャンセルが出たわけでもないし、どうしてこうなってしまったのか分かりません」
「過去の例とは、具体的にはなんなんだ?」
支配人は聞いてみた。
「はい。客室稼働率が100%とのことで、最近の100%稼動の日で、シフトが適切だったと評価していた日の実績をいくつか参照し、それらに合わせて予定を組んだんです」
そういうと管理者は、支配人のパソコンを操作して、自分が参照したという過去の勤務実績データを表示させた。そのデータを見る限りでは、確かに昨日の人員配置は適切だったように思われた。

管理システム 機能一覧:就業実績バーグラフ(拠点別)
<参考:管理システム機能「就業実績バーグラフ(拠点別)」>

そこで支配人と管理者は、いくつかのポイントからこれらのデータを確認してみることにした。そして、以前のデータと昨日のデータとでは、レストラン売り上げが大きく違い、それは客数の違いによるものだということが分かった。支配人は言った。
「つまりこういうことだね。君が参照した過去のデータは週末のものだった。うちの週末は家族客が中心だ。だから1部屋当たりの客数が2,3人程度になる。参照したという日のレストランの客数も、ディナーだけで200人超の大入りだった。しかし今回は違う。同じ100%稼動といっても、選手のほとんどは1人1部屋になっていて、昨日の1部屋当たりの客数は1,2人だ。昨夜は、選手や球団スタッフの皆さんも含めて、ほとんどのお客さまが夕食にレストランを利用してくださった。でも、客数は全部で100人程度だった。結果として、200人以上のお客さまに対応した日と同じメンバーで、100人ほどのお客さまを迎えてしまったということになったわけだ」
「申し訳ありません。考えが足りませんでした。昨日は初日ということもあって、私自身、浮き足立っていましたが、思えばキッチンにもホールにも、手すきの従業員が何人もいたようでした。早急に予定を変更し、改善することにします」
「原因が分かってよかった。今日の出勤予定者にいきなり来なくていいと連絡するわけにもいかないだろうから、明日の分から改善してくれればいい。食事の内容は好評だったようだ。引き続き、よろしく頼む」
支配人がそう告げると、管理者は、すぐにシフト計画の変更をすると言って部屋を出て行った。
結局、ホテルBのこの月の売上高は、ホテルA同様、前年同月比で8%増となった。しかし人件費の増加は12%に抑えられ、結果、経常利益で前年同月比伸び率20%という、新記録を達成することとなった。

不要な人件費を抑制し利益を確保する

お話の要点はとても簡単です。ホテルAもホテルBも、最初は同じように、「人員の過剰配置」という失敗をしてしまいました。しかしホテルBは、初日の結果から2日目には問題に気が付き、3日目には対処を完了しています。これによって不要な人件費を抑制し、利益を確保することができたのです。
ホテルBのような運営は、夢物語だと思っている方もいるかもしれません。「システムにお金をかけられない」、「安いシステムを導入しても、手間ばかりかかったり、役に立たなかったりする」。そんなふうに考えていらっしゃる方も多いのではないかと思います。
確かに以前はそうでした。「コンピューターシステム」というものは非常に高価で、また、使いこなすことが難しいものでした。しかし、時代は変わります。わずか数年の間にインターネットの利用料や市外通話の料金が劇的に下がったように、コンピューターシステムの価格は下がり、使い勝手は向上してきているのです。

売上高人件費率はすぐに計算することができる

ここから、ホテルBが行なっているようなコンピューターシステムの活用を、安価に実現する方法を紹介させていただきます。
ホテルBの支配人は、前日の売上高人件費率を確認し、異常に気が付きました。売上高人件費率は、人件費を売上高で割るだけで求めることができます。100万円の売り上げに対して人件費が20万円であれば、売上高人件費率は20%。いたって簡単な計算です。毎日の売上高と人件費さえ分かれば、売上高人件費率はすぐに計算することができます。
ではまず、毎日の売上高はどうしたら確認できるようになるでしょうか。
高価なシステムを導入すると、フロント、レストラン、売店などにあるすべてのレジを統合管理し、それぞれの売り上げデータをサーバーに吸い上げて集計することができます。この場合、毎日の売り上げどころか、時々刻々と変化する今この瞬間の売り上げ状況を把握することも可能となります。
しかし簡素なレジであっても、「締め」という操作をすればその日一日の合計売上高は出てきます。ホテル内にあるすべてのレジで一日に一回合計売上高を確認し、パソコンから簡単な管理システムにその値を入力するという操作をすれば、毎日の売上高を集計することは可能です。

勤怠管理システム

人件費については、一般的なタイムレコーダーなどではなく、パソコンなどを使って出退勤時刻を記録する「勤怠管理システム」の活用によって、毎日の確認が可能となります。
少し前までは、勤怠管理システムといえば、1台30万~50万円もする特殊なタイムレコーダーと、150万~300万円程度のサーバーシステムを購入する必要がありました。しかし最近では、パソコンとバーコードやICカードなどを使って、だれでも簡単に時刻の記録ができるシステムが出てきています。また、ASP(Application Service Provider:ソフトの期間貸し)と呼ばれるサービスもあり、サーバーシステムというものを購入する必要もなくなってきています。
バーコードなどによって記録された時刻は自動的に集計され、概算の人件費を算出することができます。もちろん、7:52の出勤を8:00からの勤務とみなすといった時刻のまるめ処理や、早番の場合は7時間半超過から時間外とみなすといったシフト計画に基づく集計、残業の算出など、ホテルによって異なるさまざまな集計方法・計算式に柔軟に対応できるシステムもあります。
このように、売上高と人件費を日々簡単に集計する仕組みを用意すれば、あとは電卓があれば売上高人件費率を求めることができます。また、Excelを使えばグラフ化することも容易です。さらに、ちょっとした機能拡張が可能な勤怠管理システムであれば、売上高の入力を受け付けて、自動的にグラフ化するなどの処理を行なうことも可能です。
ちなみに私の所属するネオレックスが提供しているASPサービスでは、数十万円の初期費用と数万円程度の月額費用で、このような管理を実現することができるようになっています。

システム化検討のポイント

システム化を検討する際のポイントは、ずばり「目的を絞り込むこと」です。私は趣味で写真を撮るのですが、いつか人に「構図の基本は引き算だ」と教わり、今でも時折その言葉を反芻しています。「あ、いいな、写真に撮りたいな」と思ったシーンを漫然と切り取ると、ほとんどの場合、面白みのない、何を撮ったのか分からない写真が出来上がります。しかし、「あ、いいな」のあとに、「どこがいいのかな」、「どこはいらないかな」と考えて、不要と思われる部分をフレームから外していく、つまり「引き算」をしていくと、少なくとも自分では面白いと思える写真を撮ることができます。(他人にも評価してもらえる写真を撮るにはもう少し違った技術も必要ですが。)
コンピューターシステムも同じです。吟味することなくあれもこれも実現しようとしたシステムは、必要以上にお金がかかった上に、結局何の役にも立たないというケースが多くあります。前述のように、時代が変わり、よいシステムを安価に構築できるようになりました。しかし、目的を絞り込まなければ、お金や手間ばかりかかるシステムを手に入れることは、今でもとても簡単です。

何をするためのシステム

知らない方は驚くかもしれませんが、世の中には、エリートと呼ばれるような人たちが、散々検討したうえで、数千万、数億円をかけて開発・導入したにもかかわらず、全く利用されることなく放置されているというシステムが、今でも無数にあるのです。逆に、「何をするためのシステムか」という点を吟味し、目的を絞り込んだ上でシステム化の検討を進めれば、最低限のコストで最大限の成果を得ることができるようになります。
皆さんこれからのシステムの導入を検討されることがあれば、そのときはぜひ、「引き算」のお話を思い出していただければ幸いです。
コンピューターシステムをいかに活用したとしても、にわかに売り上げを増やすことはなかなか難しいのではないかと思います。しかし、不要な人件費を削減すれば、それだけですぐに利益を増やすことができます。
「コンピューターシステムの活用により利益を増やすことはとても簡単な場合がある」私はそう考えています。

(週刊ホテルレストラン 2005年11月11日号)

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